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第13回「旅行」

私は旅行にいく時、特に、飛行機に乗ったり、船に乗る時には 、自分の顎態模型と口腔内のレントゲン写真を家族に預けて行 く事にしている。

どうしてかと言うと、それは『もしも』の時のためだ。

以前、技工学校時代に受けた法歯学の講義で、身元不明遺体が 発見された時には、その身元を捜す手がかりとして歯形や歯科 医院での治療履歴が重要な役割を果たすと聞いた。 私はこの講義に大変興味を持った。 それは、1985年に起きた御巣鷹山の日航機墜落事故が私の住 む地域の近くであった事、そしてその事故の被害の大きさ、悲 惨さを生々しく聞く環境にいたからだ。

その当時、私の住む地域の空には自衛隊のヘリコプターが騒然 と行き来し、まだ小学生だった私の目にも、重大な事態が起き たと理解できる、とても恐ろしい光景だった。テレビのニュー スでも連日報道され、犠牲になった人の身元確認が難航してい ることなども伝えられていた。 そして後に歯科技工士となり、勤務した技工所と取引がある歯 科医院の先生がその当時、事故現場で検死医として遺体の身元 照合に携わった事を知り、またその先生の手記などで、当時の 悲惨さをかなり現実的に改て知った。

飛行機や船を利用する際には、必ず数%の危険が伴う可能性が あるとおもう。 事故にはあいたくはないが、万が一あってしまった時、そして その事故の被害が大きければ大きいほど、命の保証は無いし、 外形だけでは身元確認すら不可能な事態に陥る。 事故にあっ てしまうのは仕方がない。 きっとそういう運命だったのだと 納得せざるをえない。 しかし、せめて肉体だけでも家族の元 へ帰りたい。

だから私は、いつ何があってもいいように、身元照合に必要な アイテムを事前に家族に預けていく。 家族は「そんな縁起で もない」と嫌な顔をする。 あま、それも解らないでもない。 私だって事故に会いたい訳じゃない、ただ、万が一を考えての 事なのだ。 逆に考えると、この行動が、私にとってある種の事故に会わな いための願掛け、保険となっているのかもしれない。 『この模型とレントゲン写真を使う時が来ませんように…』と。


YO-YOでした


吠えろ歯科技工士